場所は九段坂上。自分は刑事だった。
相棒と歩いていると、文房具屋の店頭で、長嶋茂雄さんを騙そうとしている男がいた。
30代後半くらいか。
長嶋さんにハガキ300枚と高級ボールペンを買わせて、それを持ち逃げしようとしていた。
我々は身元を隠しながら近づき、ボールペン選びを手伝いながら、様子を伺い、既の所で止めることができた。
警官に男を引き渡すと、男は長嶋さんに頭を下げる。
長嶋さんは微笑んで、その場を立ち去っていく。
私はは九段下駅に向かって歩き出す。
相棒は自転車に乗って私の前を走る。
詐欺を働くまでに追い詰められた男、男を憎まず赦した長嶋さん、2人の心境と境遇を想い、私は泣き出してしまう。
相棒は呆れて、自転車を漕ぎ続け、私から遠ざかっていく。